どうなる家康 予告編 02 面白き青春

作 文聞亭笑一

明けましておめでとうございます。

年賀状の付録として、大河ドラマ追いかけシリーズを添付させていただきます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

雪斎と竹千代

師弟の関係も・・・運不運、相性など、理論理屈とは違うところがあります。

雪斎禅師は実に優れた指導者だと物語に描かれています。

臨済宗・建仁寺派の高僧で、今川義元の軍師であり、為政者としても駿河衆に畏敬されていたという大政治家です。

・・・というのが定説で、こう書くと、今川家が戦国大名として成長したのは雪斎の功績で、今川義元は京かぶれのボンボン・・・と言うイメージになるのですが、義元は息子の氏真とは違い苦労人です。

今川家の後継者争いを勝ち抜いてきた政治家です。

今川家の家宰として京からやってきた 伊勢新九郎(後の北条早雲)が、今川の代官として伊豆を預かり、その後独立して相模を手に入れてしまったのが、義元の先代の頃です。

義元はお歯黒などして京かぶれ・・・と言うイメージですが、「足利将軍家のNo3」という立場でもあります。

京・室町の将軍家に何かあれば三河の吉良家が後継、吉良がダメなら今川が後継・・・という幕府主流派なのです。

いつでも公方(将軍)に代われるためには、京風礼儀作法は欠かせません。

そんじょ、そこらの成り上がり者とは違うのです。

雪斎と義元・・・義元が不遇の時代に京の建仁寺で修行してきた先輩(雪斎)後輩(義元)の間柄です。

ホモ関係では・・・などという小説もありますが、互いを利用し合う関係でしょうね。

義元には血筋があります。

雪斎には天才的な知恵があります。

互いにとっての目標は「天下」です。

麻のごとく乱れた天下を足利幕府の復権によって建直す・・・足利家、吉良家が衰えた今、No3の今川が立つとき・・・、この思いは、雪斎と義元の共有する目標、信条でした。

そこへ転がり込んできたのが家康・竹千代です。

京に今川の旗を立てる。

この目標に向けての道筋は「三河を先兵として尾張を討つ」その次は「美濃を制し、近江を制し上洛する」ですから、竹千代を懐柔し、手駒にすることは当然すぎるほど当然の戦略的手段です。

従って竹千代を雪斎の支配下に置き、洗脳を始めます。

洗脳・・・と書くと、宗教的な強制や思想教育をイメージするかもしれません。

が、学校教育とて一種の洗脳です。

「戦争はいけません」「民主主義は良いことです」これも一種の洗脳です。

我々世代は小学校でしっかりと洗脳されてきました(笑)

民主主義が良い制度だとは思わないが、他に代わるものがない(チャーチル)

氏真と竹千代

氏真と竹千代、立場が全然違いますが、雪斎学校での正規の生徒はこの二人です。

氏真は長、国主となってからの施政の「結果が愚」だったので「知能が劣る」「わがまま者のボンボン」というイメージになりますが、本当はそうでもないと思います。

蹴鞠の名人・・・と言うことは、運動神経も良く機敏です。

蹴鞠の業はサッカーのリフティングですからねぇ。

運動神経が良くなければなかなかに続きません。

歌や茶などの京風の礼儀に通じている、と言うことは常識人としても「愚」とは縁遠いと思われます。

要するに、父親の義元との比較ですね。

義元が雪斎という軍師を持ち、家臣たちの尊敬を受ける存在であったのに対し、部下からの信頼がなかった、部下を粗末にした・・・と言うことでしょう。

二代目、三代目に共通しますが「苦労知らず」のなせる業です。

雪斎から教育を受ける態度にも差が出ます。

氏真は「親父が言うからショウガネェ」と、仕方なく勉強します。

家康は「面白い」から勉強します。

これに年の差を加えると、両者は同レベルだったのではないでしょうか。

小学5年生の氏真と3年生の家康、これが同じ教科書で同じ教育内容だとすれば・・・5年生は多少サボっても3年生には負けませんよね。

ただ、記憶としての残り方、身につく知識か、そうでないかには・・・かなりの差が出ます。

「面白い」という感覚は、知識として残るための吸着剤かもしれません。

華陽院

駿府の家康にとって唯一の身内は母方の祖母・華陽院でした。

家康のために自ら駿府まで出てきたと言いますが、岡崎にいても居場所が無かったのではないでしょうか。

水野家は息子・信元の代になってから織田方に寝返ります。

それがあって家康の母・お大は離縁され水野家に戻り、久松家に再嫁します。

そのお大の母親が華陽院です。

岡崎城には今川の代官が入り、水野家出身の華陽院は人質として監視される立場です。

岡崎よりも駿府の方が気楽だったかもしれません。

華陽院から聞かされる三河の話、情景がわからぬままに・・・故郷への思いだけが募ります。

故郷の景色の記憶が脳裏に残る年齢は何歳くらいからでしょうか。

家康にとっては華陽院から聴く三河の話は桃源郷のような、実態のない世界でしたが、「三河を統一した祖父様・清康」の話には痛く感動しました。

「俺の爺様は三河一国を斬り取った英雄なのだ。俺もあやかりたい・・・。いつかやるぞ!」

「だが・・・、時を待たねばならぬ。命あっての物種だ。我慢だ、辛抱だ」

こんなことを繰り返し、繰り返し言って聞かせたのが華陽院でした。

人の世は重き荷を負って坂を登るが如し・・・

家康の言葉と言われますが、この頃に雪斎か、華陽院から聞かされた言葉かもしれません。

ともかくも、正月第一回、一月八日が楽しみです。

配役も面白いですね。

悪女と言われてきた築山殿・瀬名さんが有村架純です。

なんとなく悪女ではなく、悲劇のヒロインの予感がしますし、信長役の岡田准一、何をしでかすのか・・・超クールな天才役をやりますかね。

一回目で桶狭間の合戦まで行くような予告があります。

妻をめとり、独立を目指す青年・家康から始まるようです。後は見てのお楽しみ・・・

今年もよろしくお願いします。