紫が光る 第05回 主導権争い

作 文聞亭笑一

・・・・・・先週に引き続き、何を書こうかと呻吟しています。

紫式部が生まれて、青春を迎える頃のこの国も、都も、現代と同様な「平和呆け」の時代でした。

平和と言うことは・・・御所ではドロドロとした「政局(権力闘争)」が展開されています。

が、この国の政治経済にはたいした影響もなく、粛々と時代(農耕文化)が経過していました。

日本が平和呆けでいられたのは、当時の中国も、朝鮮も、海外の日本に関心が薄かったことと、日本政府も大陸からは「文化輸入」程度しか関心がなかったからでしょう。

経済交流など貿易も・・・殆どなかったようですから、一種の鎖国状態だったと思われます。

秋深し 隣は何を する人ぞ

・・・と言う関係は、悪くないのかも知れません。

現代は情報が多すぎて優先順位に迷います。

被災地へと・・・

① 能登半島

② ウクライナ

③ イスラエル

・・・の順が 文聞亭の関心です。

「能登に・・・ボランティアに行きたい!」と意欲は湧きますが、80爺は復旧事業の足手まといでしょうね。

能登までの交通費と宿代を見積もって・・・義援金の寄付をするのが正解です。

第1節 三者鼎立

今回のドラマは「藤原」ばっかりが次々と出てきて、どれが、どれで、誰が、誰か、わかりません。

それが低視聴率の原因でしょうし、今後の物語が展開していく上での課題でしょうね。

先週の番組で64代・円融天皇は退位に追い込まれました。

65代・花山天皇になりました。

この時代の天皇は、藤原氏の傀儡であることが多いのですが、天皇自身は「天皇親政」を目指して抵抗しています。

物語に出てくる円融天皇、花山天皇も「親政」を指向します。

平城京遷都を行ったのが50代の桓武天皇ですが、

その後は

51代 平城、52代 嵯峨、53代 淳和、54代 仁明、55代 文徳、

そして藤原の血が入り

56代 清和、

57代 陽成、

58代 光孝、

59代 宇多、

60代 醍醐

と続いてきます。

その後の61代 朱雀・・・

この辺りから今回の大河ドラマの前夜が始まります。

今回の大河ドラマでは、朝廷を牛耳る・・・と言うか「政権」中枢としての天皇、関白、左大臣、右大臣の閣議の場面が出てきます。

それぞれが政権奪取を目指して暗躍しています。

円融天皇・・・64代天皇。旧習を廃して天皇親政を目指します。

関白・藤原頼忠・・・61代 朱雀天皇以来、朝廷を支えてきた 保守本流です。

左大臣・源雅信・・・非 藤原の、天皇直系公家(源平)の代表として閣議に参加します。

右大臣・藤原兼家・・・ 野心満々、今回の物語は彼を中心に回ります。

準主役・三郎の父

兼家の三男坊が道長、そしてその恋人役が紫式部(まひろ)ですね。

天皇と左大臣 vs 関白 vs 右大臣

三つの勢力、派閥がせめぎ合います。

その手段は・・・理ではありません。情と意地のせめぎ合い。

   理にこだわれば角が立つ

   情に棹させば流される

   意地を通せば窮屈だ

漱石の悩みは平安以来でした。解決困難な課題ですね。

与野党に分かれての、正々堂々の政権争いではありません。

派閥同士のせめぎ合いです。

現代の自民党が平安以来の伝統を引き継ぎますかね。

金・・・賄賂も伝統でしょうか。

第2節 関白・藤原頼忠

藤原家の「氏の長者・・・藤原家代表」として一時代の朝廷の最高位に君臨し続けました。

61代 朱雀天皇から始まり、62代 村上、63代 冷泉を経て64代 円融の時代は関白として公家の最高位に立っています。

最高位にいながら・・・目立った実績がないのは、自らの血統を朝廷に入れることが出来ず、天皇家の親戚、外親として政権を牛耳ることが出来なかったからでしょうね。

そもそも「娘を天皇の后にして子を産ませ、それを次の天皇にして政権を我が物にする」という政治が異常なのですが、

天皇家をナンバーワンとして祀りあげ、実権はNo2の藤原が握る

と言うのが始祖・中臣鎌足、藤原不比等以来の伝統的手法です。

こういう構造は現代の大統領と首相の関係に似ていて興味深いですね。

国王、大統領が実権を握り、首相が国務を執行する国

国王、大統領は象徴で、実務は首相が執り行う国

日本は後者のスタイルとして武士の時代には「将軍」という・・・占領軍総司令部のような為政者が国家を統治していくことになります。

そして今や将軍ではなく「総理大臣」になりました。

保守本流として、天皇家や律令体制を守ろうとしたのが頼忠でした。

第3節 左大臣・源雅信

テレビでは全く影の薄い存在ですが、円融天皇、花山天皇からは「天皇親政を実現するための中心人物」と期待されました。

天皇からすれば「藤原から政権を取り返す」には 非: 藤原の源氏は貴重な存在です。

しかし、雅信は深入りを避けて日和見の態度を取ります。

舞姫として娘・倫子(黒木華)の代わりにまひろを立てる辺りがそれで、娘を天皇の后にして藤原家と張り合うようなことは避けます。

後に倫子は道長の妻となり、倫子の産んだ娘達が次々と天皇の中宮として入内していきます。

藤原道長の「満月」を支えることになるのですが、そういう政治判断をしたのは雅信ではなく妻(石野真子)の意見だったようですね。

第4節 右大臣・藤原兼家

野心満々、目的のためなら手段を選ばず・・・と暗躍しますね。

先週までのところで娘の産んだ子を東宮(皇太子)にする計画はうまくいきました。

次は即位したばかりの花山天皇を出来るだけ早く退位に追い込み、孫を次の天皇に据えたいところです。

皇太子になったとは言え孫は未だ幼少ですが、「幼少の方が、親政などと余計なことをしなくて良い」とすら考えていますから・・・ワルですね。

道長の次兄・道兼を使って次はどんな手を打ちますかね。

第5節 藤原実資

実資・・・ 円融天皇の側近として侍従長のような役割をしていた公家(秋山竜次)ですが、宮廷内の唯一の正義派、ご意見番として道長の時代まで生き延びます。

実資の意志の強さを支えたのは藤原氏北家の嫡流・小野宮家の当主というプライドだったと言います。

ともかく・・・登場人物が藤原ばかりで覚えきれません。