号外 東北関東震災(第11回)
文聞亭 笑一(市川 笑一)作
NHKの大河ドラマが、先週は中止になりました。流れる…も、地震速報に切り替えます。
「流れる・・・」題名が悪かったのか?? 被災地では、家も人も流されてしまいました。
突然の大地震。驚きましたねぇ。
小さな横揺れが来て、ゆったりと揺れ始めました。
「これは遠いな」と私。「この間の仙台の余震かな」と経理担当。
…と、語り終えぬ前に、会議室の壁にあった書棚がゆっくりと傾いてきました。
「あ!」近くに居た者が書棚を押さえに立ち上がりました。全員、会議どころではありません。もう一つの書棚も大きく揺れています。これまた近くに居た者が押さえに走ります。
「○さん! 横の壁!」波とは直角方向に立っていた書棚が歪みながら揺れだしました。
四、五人が棚に取り付いていると、隣の部屋で大きな声がします。「キャー」と悲鳴。
「ガラガラ・ドスーン」書架が倒れたらしい音がします。更に、「ガガーン」大音響が響いて、隣室の図面棚が倒壊した音がしました。
築40年の耐震基準前のビルの5階です。メリメリ、ミシミシ、生きた気はしませんが、慌ててみても仕方がない。役員会でしたから、その部屋にいたものは年寄りばかりです。
「なるようにしかなるまい」とそれぞれの仕事(棚を押さえること)に専念していました。
…というと、悟った風に聞こえますが、早い話が、どうして良いかわからなかったのです。そのうちに大きな図面用の複写機が動き出しました。床の上を、右に左に滑り始めます。重量物ですから人力では押さえ切れません。
「あれには近づくな」と騒ぐのが精一杯。複写機はスローテンポでワルツを踊ります。
「下は大丈夫か」社長の声に、非常階段を下の階まで駆け下りようとしましたが、駆けるどころか手すりにしがみついて滑り降りるようなものです。<この手すりが一番危ない>と思いつつも、事務所を見ると全員退避していました。商品倉庫は散らかっていますが、人はいません。そのまま外に飛び出してみると、社員や近所の人が電柱の周りに集まっています。見上げると電柱の上にはトランスが…。
「そこはダメだ! 上を見ろ」みんな驚いて逃げ出し、道の真ん中にしゃがみこみます。
やれやれ、と席に戻ると、また来ました。これを二、三度繰り返してようやく落ち着きましたが、会議どころではありません。
「では原案通り決定でよいな」と社長。 「異議なし」と他の者。
実は昇給に関する審議をしていて、異論続出だったのですが、すんなり決定しました。
「次は従業員の安否確認だ」と私。皆、我に帰って職場に戻り、電話に飛びつきますが…通じるはずがありません。
「メール打て」 しかしこれもダメ。出先は停電しています。通じません。
我が家にも安否確認をしますが…固定電話も、携帯電話も全くダメです。特に固定電話は停電していたらオシマイなのです。「ショウガネェ念のため」と思いつつも、携帯メールだけ妻に打っておきました。送信完了サイン、これは、いずれ届くはずです。
…と、30分もしないうちに返事が来ました。「停電しているが全員無事」
これで一安心です。幸いにして会社のある一区画だけは停電もしていません。空調も、ガスも、水道も健全ですから、私は徹夜することにして、方面別に車で、順次従業員を帰宅させました。残るは私を含めた電車での遠距離通勤者が3人。
「宿直だな。食糧を買い込むか」とコンビニに行ってみました。散らかってはいましたが物資は豊富です、食い物と水、いや、水代わりにビールを買い込んで、後は鉄道の回復、通信網の回復を待つだけです。
ラジオを聴いていると、だんだん様子がわかってきました。先日の宮城沖地震の余震ではなく、先日の地震が予兆であったこと。宮城沖と茨城沖で双子の地震であること。更に、東北沿岸は大津波です。インタネットからは物凄い被害の状況が動画で配信されてきます。
「オイ、オイ、オイ」 酒盛りをしつつも異常事態に驚きました。
マグニチュードが、当初の7,9から8,3へ、更に8,8.最終的には9,0になりましたね。気象庁も過去にデータのない大きさに判断を誤ったのでしょう。前例のないことは、瞬時に判断できませんから、致し方ないところです。
が、政府の対応はイマイチでしたね。危機管理の下手な内閣です。
それにしても、優柔不断総理のときに大災害が起きます。神戸のときは村山さん、そして今度は菅さん。自衛隊、警察、消防といった危機管理部隊に偏見をお持ちの方のときに限って、大災害が起きます。天罰でしょうかねぇ。お二人とも、指示、命令という組織力の使い方が出来ない人ですからね。
自衛隊の偵察機を始め、軍艦、ヘリ空母などの偵察活動が遅すぎます。彼らは偵察のプロですよ。そのために税金で訓練をしているんです。地震発生直後に千里基地から、千歳や三沢から情報収集に動かなくてはいけません。
さらに、救援派兵も2万、5万、10万と状況がわかるにつれて増員していますが、これは「戦力の逐次投入」といって兵法上では最も稚拙なやり方です。初動で全国の自衛官、警察、消防に対し、全員出動準備を命じておくのが当然でしょう。が、まぁ、戦争嫌い、「攻めなければ攻められない」という発想の方に、説教しても馬の耳に念仏ですね。兵法などと言ったら、とたんに聞く耳をふさがれますね。
原発事故だって、東京電力や経済産業省に任せすぎです。日本国内で放射能処理のエキスパートは自衛隊ですよ。北からの核攻撃に備えて、日夜、シミュレーションに励んでいる部隊があるんです。関電、中電からの応援だって命令すべきでしょう。どちらの会社だって「明日はわが身」ですし、製造メーカの技術者だって招集すべきです。とにかく、国を挙げて対応すべきですよ。
災害救助は戦場です。こういうときはプロの自衛隊、警察、消防に任せて「政治主導」などと、たわごとを言っていてはいけません。予算? 何のための税金ですか!
足りなければ・・・事後に震災特別税を徴収されても文句は言いませんよ。
・・・と。ここまでは震災の翌日に書きました。
そのあとは無計画停電始まりです。政府も東電も「計画停電」といっていますが、行き当たりバッタリでしたね。処置そのものは妥当で、国民全員が痛みを分け合うのは当然です。
万人単位の死者、行方不明者の災難に比べたら、3時間や4時間の停電は何でもありません。時間さえわかれば、十分に対応可能です。家にいるから電力を消耗するわけで、家族揃ってジョギングか、散歩に出て辺りを一回りしてくれば電力は使いません。
が・・・、原発の報道と被災地の情報を垂れ流すマスコミが不安をあおります。
これには、かなり脳天気な文聞亭でも不安を感じました。女子供は「福島に原子爆弾が落ちた。原爆が6個も落ちそうだ」と恐怖に駆られます。
「さあどうしよう」食糧備蓄、救急物資の買いだめに走ります。世間では突如パン食い競争が始まって、店先からパンが消えたとか…。それも、関係のない関西のオバチャンまで騒ぎ出し、九州では乾電池の買い漁りが起きるとは、漫画の世界ですねぇ。
被災地で一番欲しいものが、関係のない人たちに買い占められ、そして、その人は「寄付をしなければ」と金で片付けようとします。これが、現代日本の縮図です。
株価はどんどん下がります。下がる恐怖に駆られて売り一色ですから、留まるところを知りません。日本版ブラックマンデーです。黄金虫、いや、小金持ちのオバチャン資本家が大騒ぎです。これまたマスコミによる風評被害で、日本企業は二日間で資産を47兆円も減らしました、100兆円くらいまではいくでしょうね。政府が東京電力の広報部長に成り果てて原爆騒ぎを加速させていますからね。
この際、我々の取るべき道は、被災者の気持ちに少しでも近づくことです。会社に出勤途上に、今日も横浜駅で改札制限に遭い、長い行列に並びましたが、誰も文句を言いません。
粛々と順番を待ちます。それが一番早く、目的を達する方法だとわかっているのです。
これは日本が世界に誇っていいことでしょう。社会の空気を吸っている人たちは、日本的常識の世界に生きているのですが、マスコミとオバチャンはそのことがわかっていません。
我利我利亡者に成り果てしまい、それを報道が煽ります。
被災地が一番欲しいものは何か。それを買い控えをするのが本来のあり方でしょう。
日本赤十字社は何をしているのでしょうか? 歳末義援金、赤十字募金には熱心ですが、今回は全く姿を見せません。こういう時こそ存在価値を発揮すべきです。組織力を生かして一家で1000円の募金活動を展開すべきでしょうが、マスコミに出てくるのはボランティアNPOばかりです。目立ちますが微力です。
そういえば、震災から3日も経って行政から指示が来ました。「担当地域の一人暮らし老人を見回って状況を調べよ」というのです。そんなこと…翌日の朝に済ませていますよ。
なにをいまさら…。馬鹿いってんじゃないよ。報告書の要求などしてきたら尻をまくってやろうかと憤っております。土日はのんびり休んで、役所に出てきたら命令するなどとは公僕の風上にも置けませんねぇ。
以上、震災報告???でした。