敬天愛人 30 薩長同盟

文聞亭笑一

年号が「慶応」に改められるあたりから戦雲が立ち込めてきます。

慶応と言えば、まず念頭に浮かぶのは慶応義塾大学大学ですが、この学校は慶応年間に設立されてはいません。それより以前の安政5年(1868)に、福沢諭吉により中津藩の蘭学塾として設立されています。福沢諭吉は、その後勝海舟などと共に幕府の使節団に随行して渡米し、新知識を仕入れて帰り、教育の場で活躍します。ご存知、一万円札の顔ですね。

ただ、この人、自分を偉く見せようと考えたのか、勝海舟など同行した者たちをけなしています。例えば「勝は艦長と言いながら船酔いして寝ていた」など、どうでも良いことにケチをつけています。咸臨丸を操船していたのは勝以下の幕府海軍の者たちで、福沢などは只の乗客に過ぎません。また、渡米して得た知識を、坂本龍馬を介して西郷など薩摩の政治家に、桂・高杉など長州の政治家に伝えて「維新」を実現させたのは勝海舟で、福沢などはそれを眺めていただけの評論家です。こういう人をお札にしてしまうから…マスコミなどの評論家が大きな顔をして、のさばる世の中ができてしまったのかもしれませんね。慶応大学の関係者の皆様には申し訳ありませんが、わたしは「慶応大学」は好きですが…維新における福沢諭吉の態度は嫌いです。

まぁ、福沢諭吉は今回の「西郷どん」には出てきませんね。

アーネスト・サトウ

ドラマには出て来ないところで、維新の進行に影響を与えているのがこの人です。

イギリスの外交官でパークス公使の通訳です。

西郷、大久保などとも頻繁に交流しますから薩摩の政策決定にはかなりな影響力を発揮します。彼が「ジャパンタイムス」に掲載した論文「英国策論」は、伊達宗城など多くの政治家に読まれています。その内容は

1、将軍は主権者ではなく、諸侯連合の主席に過ぎない

現在の条約はその将軍との間で結ばれているが、将軍には実行能力はない

2、独立大名たちは外国貿易に大きな関心を持っている

3、現行条約を廃し、天皇及び大名諸侯連合と条約を結び直すべきだ

日本の政権は将軍ではなく、諸侯連合であるべきだ。

この論文にもある通り、イギリスは幕府を見放しています。薩長連合というか…、勝が示唆し、坂本龍馬が調停して歩く「諸侯共和制政府」にむけて裏で便宜を図ります。坂本龍馬の海援隊がグラバーを通じて大量の武器弾薬を仕入れますが、これはパークスやサトウなど英国政府の黙認があればこそ実現できたことです。土佐の浪人集団だけで出来る芸当ではありません。

サトウを「佐藤」と理解して、日系イギリス人か?と考える人もいますが、れっきとしたスラブ系イギリス人です。ただ、後に駐日公使として来日し、日本人女性を妻にした時などは「佐藤愛之助」「薩道静山(雅号)」などとも名乗っていますから誤解を招きます。

今回の放送では岩倉具視が登場したり、桂との間で薩長同盟を締結したり…という場面でしょう。薩長の意地の張り合いを岩倉や龍馬が和ませていきますが、パークス、サトウが鹿児島を訪問し、それを仙巌園で接待するのが西郷です。

今週は手抜き、1ページです。